選挙をやってもなかなか国は変わっていかないですね。
生きづらい世の中だとも感じますし、新たな問題はどんどん生じます。
そんな世の中に切り込んでいく本です。
著者の成田悠輔氏はイエール大学で助教授。
メディアでの爽快なコメントに新鮮さを感じて、成田氏が書いたこの本を手に取ってみました。
自己紹介
『22世紀の民主主義』の感想① 利権などを土返ししたさっぱりした感じが新鮮
読んでいて爽快感を覚えました。
まず、引用等が自由だと書かれていることに驚きました。
この本の内容が私独自の新しい見解だと主張するつもりは全くない。
22世紀の民主主義
[中略]
逆にこの本の内容を再利用したい場合はジャンジャンやってしまってほしい。私に連絡する必要も名前を記す必要もない。切り抜くなりパクるなりリミックスするなり自由にしてほしい。自分のシマや功績が増えることより、世界や政治がちょっとでも変わることの方が楽しい。
こんな記述が書かれた本は初めてで新鮮でした。
ということで、この本を引用しつつ、私個人の感想や見解を加えて記事にしてみます。
『22世紀の民主主義』の感想② 先回りした話の展開が爽快
他の新書では、「それをやったら、他に○○の弊害があるじゃん!」とツッコみを入れたくなります。
この本にも、そういった考えになったことはあります。
しかし、著者はきちんと読者が思いつくような弊害についても書いてあることが多いです。
(全部ではありませんが…)
政治家は政治の仕組みを変える?
例えば、こんな記述がありました。
選挙そのものの仕組み、つまり票を集計して勝者を決めるルールを考え直すことも大切だ。
[…中略…]
他にもシルバー民主主義や民主国家の近視眼化の手だてとしてよく持ち出される提案がある。若者の声をもっと反映する選挙の仕組みである。
たとえば「ある世代だけが投票できる世代別選挙区を作り出す」「投票者の平均余命で票を重みづける」「未成年など選挙権を持たない子の親に代理投票権を与える」などだ。
22世紀の民主主義
ここの部分を読んで、こんな感想を持ちました。
「そんな政治家は現行制度で政治家として生活できているのに、わざわざ方法を変える必要はないじゃん!」
「影響力のある政治家は年齢を重ねている人が多いのだから、本当の意味で若者のことを考える訳がない」
「政治家の多くは難関大学を出ているのだから、巧妙な手口で自分が損をしないような制度を構築するに決まっている」
だから、これ以上は論の展開は深まらないじゃん!と心の中でツッコミました。
すると、後になってこんなことが書かれています。
既存の選挙制度で勝つことで今の地位を築いた現職政治家がなぜこうした改革を行いたい気分になれるのか、無理そうな匂いがプンプンするからだ。
22世紀の民主主義
的確に書いてあるなと感じました。
なお、成田氏は若者重視をしたからといって国が良くなる訳でもないとも述べていることを付記しておきます。
Webは公平な政治を行える?
また、成田氏は選挙による民主主義よりも、もっと民意を反映できる案を提唱しています。
民主主義とはつまるところ、みんなの民意を何らかのデータを入力し、何らかの社会的意思決定を出力する何らかのルール・装置である
[…中略…]
選挙はデータ処理装置、驚くくらいざっくりと設計された単純明快なデータ処理装置と言える
[…中略…]
民主主義的決定というデータ変換における「入力側」と「出力側」を質量共にドカッと押し拡げる
22世紀の民主主義
このように、選挙よりもより多くの民意を反映できる制度の構築を提案しています。
これを実行するために、デジタル技術を使用するとも述べています。
成田氏は、SNSだけでなく、街角で聞こえてくる声、無意識に発している民意も拾い上げると言います。
Web5.0の時代です。
これを聞いて、こんなことを思いました。
「結局は集約の方法や、拾い上げた民意のデータ処理方法によって、データ処理をする人が恣意的に政治を決められるのでは?」
この点についても、しっかり予防線が貼られていました。
無意識民主主義アルゴリズムの学習・推定と自動実行のプロセスは公開されている必要がある。
22世紀の民主主義
アルゴリズムが公開されていれば、仕組みをきちんと学ぼうとする人は不正を見抜けますね。
ちなみに、日本人は勉強しない大人が多いと聞くので、難しいかもしれません。
ただ、義務教育制度があり、タダ同然で情報を手に入れられる日本において、不勉強は自己責任と言ってもいいでしょう。
『22世紀の民主主義』の感想③ 制度の固定化こそが問題解決の弊害かも
読んでいて、色々な制度や仕組みの変化に向き合わないことこそが問題解決を難しくしているのかもと感じました。
妙に高学歴化が進んでみんな自信ばかりを深めるようになった教育(というか学歴)の「過剰」。
22世紀の民主主義
学歴(学閥も含みますが)は一定の知的能力を示す指標として使われています。
しかし、少子化により競争があまり激しくなくなり、多くの大学は推薦や総合型選抜により入学者数を確保するようになりました。
もちろん、進級や卒業もそれほど難しくない場合が多いです。
大学側も経営基盤があっての教育・研究活動となるので、経営を優先せざるを得ません。
そうなると、学歴は能力の指標にならない場合もあります。
もちろん、このことがあるので最近は企業の就職活動で学歴だけに依存しない採用活動をすると耳にします。
選挙制度も同じです。
本書でも様々な制度が提案されましたが、時間が経てば抜け道を見つける人は必ずいます。
だから、5〜10年に1回くらいは民主主義の方法を一新するのが良いのです。
もちろん、制度を変えるのは大変です。
選挙で言えば、立候補する政治家も、運営する公務員も、投票する国民も新しいことを理解しなければいけません。
常により良い制度に一新されるなら、多少間違った制度を選んだとしても修正ができます。
こういった感覚を法令などに明記するのではなく、必要な手間として国民感情的に認識しておくのが良いでしょう。
『22世紀の民主主義』の感想のまとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
特に最後の方は個人的な感想文になってしまいました。
この記事を書く前に要点を書き留めたメモでは、もっとたくさんのことを紹介するつもりでした。
しかし、文字数は2500字を超えてしまい、読んでくださる方も辛くなるだろうと思います。
ぜひ続きは本書をご覧になって、考えを深めてみてはいかがでしょうか。
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