2023年5月にコロナの区分が変わりました。
病気にかかると事情により欠席扱いになってしまう,欠席扱いにしないなど対応が分かれています。
教員としての経験を活かして、このあたりの扱いについて書いてみます。
※この記事は、2023年5月の時点での情報です。
感染症の区分が変わることで、対応が異なる可能性があります。

自己紹介
インフルエンザ等で適用される「出席停止」について
インフルエンザになると「出席停止」になります。
風邪なら欠席になるのに,インフルエンザは欠席にならないのはなんで??と思うかもしれません。
まず,この「出席停止」について説明します。
校長は感染症にかかっており、かかっている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令の定めるところにより、出席を停止させることができる
学校保健安全法 19条
ということで,まず言えることは出席停止は学校長の権限で行うものです。
お休みをする児童生徒や家庭の権利ではありません。
ではなぜ,学校長は出席停止を決めることができるのでしょうか。
それは,学校で病気を流行らせないためです。
感染力が強いと言われているインフルエンザにかかった児童生徒が学校に来たら,他の生徒に広まるのは時間の問題です。
それを防ぐための出席停止です。

これを天秤にかけて、「インフルは広まりやすいので、かかったら学校に来ないでね」という考え方です。
風邪は感染力がやや劣るので、「学校に来ないでねとは言いませんよ」となるわけです。
これらは学校保健安全法施行規則で決まっていることです。
出席停止は学校にくる権利を一時的に停止するものです。
ここで、権利と義務について補足。
義務教育の「義務」は保護者に課された義務です。
昔は子供を学校に行かせず,労働力として畑仕事をさせたりしていました。
豊かな人生を送れるよう,教育を受ける権利を保障するため,保護者に義務を課しているのです。
一方,授業中に問題行動をした生徒に対し「廊下に立ってなさい!」と教員は言えません。
廊下では授業を受けることができません。
ただし,教育上必要な懲戒権は教員も持っています。
だから、放課後に掃除当番をさせるといったことはできます。
懲戒権にもランクがあって,退学・停学等は学校長しか行えず(申し渡しができない),公立の小中(=義務教育)では停学はできません。
悪いことをした時は停学?出席停止?
義務教育の学校では「停学」はないと書きました。
ただ,問題行動により登校を制限させることはできます。それは学校教育法の「出席停止」です。
- 停学:懲戒として生徒の学習権を一時的に停止する。
- 出席停止:他の生徒の権利を守るために,当該生徒を登校させない。
当該生徒がほかの生徒と同じように登校しない点において見かけ上は同じですが,意味合いが変わってきます。

そもそも「出席停止」とは?
出席停止になると出席数にも欠席数にもカウントされません。
???という感じですよね。
具体的にみてみましょう。
ある月で学校がある日が22日あったとします。
これを出席簿上、「授業日数」と呼んでいます。
これは学校がない日曜日、祝日などは含みません。
土曜日が登校日になっていない学校は、土曜も含まれません。
ここから生徒一人一人の状況に応じて、「出席すべき日数」を計算します。
先ほどの具体例を使えば、何もなければ22日のままです。
22日について欠席、遅刻、早退がなければその月は皆勤です。

ただし、インフルエンザに罹った、忌引、停学処分などの場合はこの数字から引きます。
(忌引は3親等といった規定があります)
インフルエンザで5日間出席停止になったら、出席すべき日数は17日になります。
この17日について欠席、遅刻、早退がなければその月は皆勤ということになるのです。
(ただ、停学処分になって「皆勤賞」という賞をあげるのは変なので、皆勤扱いになることはないでしょう)
受験での扱いは?
基本的に受験では、調査書の出欠席の記録の欄で確認をします。
調査書は出席簿の日々の記録、指導要録の情報を元に作成します。
よって一般的には出席停止で皆勤が失われるということはなさそうです。
ただ、念のため受験校の扱いを確認した方が良さそうですね。
特に全日制の私立高校の受験では,皆勤の場合,推薦基準等が優遇されることがあります。
正直,「皆勤の受験生と,1日だけ休んだ受験生の違いは何?」と思うことがあります。
ただ,1年間に30日以上など欠席回数が多いと,たとえICT教育をしていると言えど,全日制の学校生活を送るのが難しいです。
それくらいの基準を設けることは納得できます。
最近は学校に登校することに縛られない通信制高校の人気が増えているようです。
コロナは学校が欠席扱いになる?出席停止になる?
さて,「出席停止」の趣旨が分かったところで,コロナを取り巻く状況に当てはめて考えてみましょう。
コロナにかかってしまった→出席停止
2023年5月8日にコロナ感染症は5類に引き下がりました。
それに伴い、原則、コロナに感染した場合のみ出席停止になりました。
新型コロナウイルス感染症への感染が確認された児童生徒等に対する出席停止の期間は、「発症した後五日を経過し、かつ、症状が軽快した後一日を経過するまで」を基準とする
[中略]
新型コロナウイルス感染症の感染が確認されていない者については、直ちに出席停止の対象とする必要はない
学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知) 文部科学省
今までは発熱等の風邪症状がある児童生徒、濃厚接触者も出席停止の対応をしていました。
これからは欠席扱いになるケースが増えます。
コロナにかかるのが不安だから出席停止にしてほしい
これは趣旨からずれているので,原則に従えば出席停止にはなりません。
ただし,文部科学省からの通知によると考慮できる条件下で欠席扱いとしない配慮もできるとのことです。
保護者から感染が不安で休ませたいと相談があった児童生徒について、同居家族に高齢者や基礎疾患がある者がいるなどの事情があって、他に手段がない場合など、合理的な理由があると校長が判断する場合には、[中略]指導要録上、「出席停止・忌引等の日数」の欄に記入し、欠席とはしないことも可能である
学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知) 文部科学省
この場合は、保護者から文書での申請や、同居家族等の診断書などが求められるかもしれません。
電話連絡だけにすると、配慮の乱用につながる恐れがあります。
出席停止になって学校の成績は下がるの?
出席停止で1週間くらい学校に行けないと成績は下がるのか?と心配になるかもしれません。
これはほぼないと言えるでしょう。
インフルエンザやコロナの出席停止は珍しくありません。
教員として何度も出席停止の事務対応はしたことがあります。
生徒を見ていて1週間程度の出席停止をしたことにより、評定が落ちるということはありませんでした。
もちろん、特定の小テストを受けられない、数回授業を受けられないことはあります。
しかし、考えてみましょう。
週に2回ある授業を1週間(=2回)受けられなかったとします。
週2回の授業は、1年間の授業数が50回〜60回くらいになります。
たかが、全体の5%くらいの授業を休んだからといって、5段階評定が5から4に変わるでしょうか?
そこまで大きな影響はありませんよね。
学校の欠席扱いと出席停止についての解説でした
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
感染症等で出席停止で不安になっている方に少し安心してもらえればと思います。
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