学校がどんな場面で外部委託に頼っている?現場から解説

協力 学校の先生の仕事
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今は求められる教育が複雑化していて,学校の教職員だけで教育活動はできません。

業者さんとのかかわりあいについて書いてみます。

隣の芝
隣の芝

自己紹介

  • 非常勤+専任の私立教員歴は約15年!
  • 担任は10年以上経験! 修学旅行の準備・引率、大学受験の指導経験もあり
  • 教科は英語海外への引率経験もあり
  • 校務分掌教務、進路、広報、生活指導、生徒会を経験!
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  • 学校にはどんな業者さんがかかわっているか疑問を持った方

学校が外部委託の業者さんに依頼している仕事

そもそも,どんな仕事を委託しているか思いつく限り書いてみます。

一つ一つ書いていったら,かなりの量になってしまいました。

飛ばし読みで進めてもらえればと思います。

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学校が外部委託するもの① 教科書・副教材・デジタル教材

教科書は出版社が作り,文部科学省の認可されたものを購入しています。

また,どこの学校でも教科書の他に副教材を使います。

小学校では漢字ドリル,計算ドリルを使った人も多いのではないでしょうか。

教科書,副教材なしには授業は成り立ちません。

義務教育の学校は教科書が無償提供されています

意外に思うかもしれませんが,国公立の小学校だけでなく,私立の小学校も教科書は無償給与されています。

教科書無償給与の対象となるのは、国・公・私立の義務教育諸学校の全児童・生徒であり、その使用する全教科の教科書です。

文部科学省 教科書無償給与制度

一方,漢字ドリル,計算ドリル,教科書ワーク,その他問題集などは教科書ではありませんので,公立でも基本的には家庭の負担になります。

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また最近ではデジタル教材も発売されています。

形態はアプリであったり,クラウド型であったりしますが,大量の問題をiPadで見られたり,All in Oneになり何冊も持ち運ばずに済んだり,音声や動画で勉強することもできます。

紙のほうがいいこともありますが,時代の流れもあり出版社はデジタル教材の販売もしています。

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学校が外部委託するもの② 生徒・家庭・学校をつなぐICTシステム

ハード面では,iPadなどの端末を販売・貸与する会社通信環境を提供する会社校内のwifiを設置・管理する会社などがあります。

ソフト面では,Classi,Google Classroomなど学校から情報を発信したり,家庭から連絡を受けたりするものがあります。

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学校が外部委託するもの③ 学校内のデータベース管理システム

学籍管理,成績処理,部活動・委員会活動管理,進路情報管理など生徒に関する情報をデータベース化するシステムは業者さんに委託して作ってもらいます。

この辺りは生徒の目に触れるものではないので,イメージがつきづらいかもしれません。

学校が外部委託するもの④ 図書管理システム

図書館が大きい学校では図書の貸し出しもシステム化しています。

バーコードやICタグで貸出管理をしているところがそうです。

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学校が外部委託するもの⑤ SNSパトロール

スマホを持っている中高生も多く,指導をしても適切に使用しない人も多いです。

そこで,業者さんに依頼をしてSNSのパトロールをしてもらっています。

法に触れる書き込み,誹謗中傷,いじめにつながりそうな案件の芽を摘むのが主な目的です。

問題のある書き込みを生徒が行った場合は,業者さんから連絡が入り次第,担任などが当人に事情を聞いて,適切に指導をします。

外部の人物が書き込みをした場合は,業者さんと学校が協議をして,削除依頼をするなど対応をします。

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学校が外部委託するもの⑥ ウェブサイト制作・管理 SEO対策

今はどの学校もホームページを持っています。

基本的にその管理,運用は業者さんに依頼しています。

修正内容があれば,校内の担当者が契約している業者さんに連絡をして修正をしてもらいます。

また,知名度の低い私立学校は検索エンジンで目につくように,SEO対策をしているところもあります。

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学校が外部委託するもの⑦ 学校案内,広告

ウェブ媒体だけでなく,紙媒体でも学校の広報活動は行われます。

最近はホームページを制作・運用している会社に,パンフレットの依頼もするケースがあります。

その方が,紙媒体で使ったデータをウェブへと転用(またはその逆も)が簡単だからです。

また,受験雑誌に広告を載せたり,ウェブ上に広告を載せたり,お金を払って業者さんに依頼することはあります。

学校が外部委託するもの⑧ 修学旅行,遠足

ご存じの通り,修学旅行は業者さんに依頼して進めます。

修学旅行の前や旅行中に,添乗員の方がいろいろ説明をするシーンを学生の時に見たこともあるでしょう。

また,遠足など日帰りの校外教育も交通手段の手配,団体入館の手配,他校とのバッティングの防止,保険の手配など,準備が多岐に渡るので旅行社の方に入ってもらいます。

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学校が外部委託するもの⑨ 講師人材派遣

最近は教員不足が深刻で,募集を出しても応募されないことも少なくないです。

そうなると,次の選択肢は派遣会社に依頼をして,講師を確保することです。

値段が倍くらいになると聞き,できるだけ避けたい手段ですが人がいないことには学校は成り立ちません。

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学校が外部委託するもの⑩ 校内清掃,施設の整備,改修工事

最近はトイレ掃除を生徒がやることは少ないのではないでしょうか?

特に私立学校は廊下,トイレなどの掃除は業者さんの方がやるかもしれません。

教室の清掃は教育の一環として生徒がやるところが多いでしょう。

正直,教育の一環なので生徒がやってもそんなにきれいにはなりません。

長期休みのときに,ワックスがけも含めて業者さんが入ることがあります。

(公立中学ではこのあたりの掃除も教員がやることがあるらしいですね・・・)

清掃業者
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その他,老朽化に伴う設備の整備や工事はもちろん業者さんに依頼します。

学校が外部委託するもの⑪ 学食・購買

高校は学食,購買があるところも多いと思います。

提携をしている会社が担当します。

学校が外部委託をするときの悩み~痒いところに手が届かない~

業者さんは営利活動の一環で学校にサービスや商品を売っています。

学校は税制面,補助金等の優遇がありますが,通常の会社に優遇はありません。

つまり高くついてしまうというのが難点の1つ目です。

もう1つの難点は,痒いところに手が届かないということです。

例えば,こんなものです。

  • 学校は土曜日も動いていますが,土曜日に休みの会社が多い
  • (いくつも会社を抱えているからか)依頼したことを忘れる,依頼したことと違った対応をされる
  • 英語のスピーキング教材など,「こんなサービスがあったら授業に入れられるのに…」と思うものがなかなかない。パッケージ化されている。
  • やってほしいサービスは,追加費用が発生する

逆に言うと,学費を貰えば,個別に生徒の質問対応も,部活動もやっている学校は世の中からずれているのか?!と思ってしまうくらいです。

業者さんの方も,親会社,下請けの関係性はあるようで,中には下請けの方で先周りをして仕事ができる素晴らしい方もいらっしゃいます。

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学校が業者と癒着なんて,まずありません。

たまにニュースで業者さんと癒着をして、キックバックをもらっているのでは?!と取り上げられます。

普通に手続きを進めれば,まず癒着なんてありません。

逆に癒着をするには相当なハードルがあります。

  • 見積もりは複数社からとります。不自然な力が働けば,入札した業者さんも気づく可能性があります。
  • 仮に絶対的な権力を持った人が独断で決めたとします。それでも送金手続きを自分でやるわけではないので,会計担当者が気づく可能性があります。
  • 公立の場合は教育委員会,文部科学省等の目もあるので,学校単位で不正を働くことは難しいです。
  • バレた時のリスクが大きいです。権力を持った人はそれなりの収入がすでにあるはずですが,それをすべて失うことになります。

ということで,悪いことをやろうとするときに,一人だけで完結できません。

だから,癒着なんて基本的には無理なのです。

癒着は絶対にないのか?!

こんなコメントをいただきました。

「癒着なんて,まずありません。」とか「制服が高いのはなんで?!」とかありますが、明らかに言えます。癒着です。

いただいたコメント

(ネット記事の引用があり孫引きは難しいので、コメントの要所を引用しました)

この点にお答えしたいと思います。

まず、癒着(裏で報酬を得るなどの不正)と、一社に依頼し続けることは別物です。

もしかしたら、特定の業者に継続的にお仕事をお願いすることにより、裏で報酬をもらっている人もいるかもしれません。

たまにニュースにもなりますね。

しかし、そうそうありません。

一方、同じ業者の製品・サービスを数年~十数年にわたって依頼することはありえます。

それは、新しい業者さんを探す余力が教員側にないのです。

風通しを良くすることが大切なのは分かります。

しかし、例えば制服を新しい業者さんにお願いしたものの、こんなことが起こっては困ります。

  • サイズのバリエーションが少ない
  • 壊れやすい
  • サイズ直しは受け付けていない
  • 意外なところで追加料金を取られる
  • 複数の業者を同時に利用して、質や価格がバラバラになる
  • 製品やサービスでトラブルが起きたら、業者は対応せず、学校に対応を迫られる

トラブルにならない業者さんを探すには手間暇がかかります。

会社を探して、面会して、素材・デザインをゼロから説明・確認して、価格を確認して、見本を作ってもらって、三社見積もりをとって、校内で会議をして…

スクールバックだけ、制服のフルリニューアルなど、規模にもよりますが数か月~数年間の準備期間がかかります。

ただでさえサービス残業が常態化している学校現場では、なかなかそこまで手が回らないのが現実です。

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学校の制服が高いのはなんで?!

制服が高いのは癒着しているから?!という考えをネットで見ました。

悪い人はいるもので,100%そうではないとは言えません。

ただ,基本的には販売数が少なく,それでも質にこだわっているからです。

また学校ごとに作るので,ユニクロなどで売っている洋服の販売数と比べると少ないです。

売れる数が少ないと,どうしても価格は高くなります。

ユニクロも制服の販売を始めたようですが、細かいカスタマイズはできないようです。

量販できることが前提となるので、学校側にこだわりがあると採択は難しいかもしれませんね。

また,基本的には3年間毎日着ても壊れない質のものを作っています。

休み時間には制服で運動をする生徒もいるでしょうが,それでもあまり破けたりするケースは聞きません。

販売数が限定的であること,質が高いことを考慮すれば,仕方ない価格になるのかなと思います。

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学校が外部委託をするシーンを解説してみました

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

かなり長くなってしまいましたが,これでも学校に入っている業者さんはすべてではありません。

いろいろな人の手で日本の教育は支えられていますね。

コメント

  1. やまだ より:

    「癒着なんて,まずありません。」とか「制服が高いのはなんで?!」とかありますが、明らかに言えます。癒着です。
    東京新聞の『学生服、都立学校の8割が特定1社と契約 業者告白「品番や色番は暗号のようなもの…」』https://www.tokyo-np.co.jp/article/183587の記事をご覧いただければわかります。

    この記事には「 都は複数の業者が参加できる仕様書とするようルール化して各校に周知しているが、一部の学校では、仕様書で毛織物メーカーや生地の品番などを細かく指定。他の業者が事実上受注できない仕様書になっていた。都によると、制服を採用している都立学校約220校のうち、約8割が1社のみと契約している。」とか、「「品番や色番は暗号のようなもの。特定の業者しか入手できない」」とか「「学校ごとに出入り業者が裏で決まっており、参入の余地はない」と業界の実態を明かした。」とあります。

    これは学校と業者や販売店の癒着ですよね。