コロナ禍のリモート教育では「GIGAスクール構想」がメディアで取り上げられました。
現場でiPadなどを使った経験を踏まえて,GIGAスクール構想で足りないのでは?と思うことをお話ししたいと思います。
自己紹介
- 学校のICT導入|GIGAスクール構想とは?
- 学校のICT導入の問題点|iPadやwifiなどの設備にだけ目が行っていない?
- 学校のICT導入後の問題点|何を一人一台持たせる?PC?iPad?Chromebook?Surface?
- 学校のICT導入後の問題点|機材が故障・破損・紛失・盗難について
- 学校のICT導入後の問題点|パスワード忘れへも問い合わせが多い
- 学校のICT導入後の問題点|フィルタリングの対応
- 学校のICT導入後の問題点|悪意を持って設定を変えたり,アプリを削除した場合の対応
- 学校のICT導入後の問題点への包括サポート体制は重宝されるでしょう
- 学校のICT導入後の問題点|生徒の端末だけではない!学校の施設も整備が必要です!
- 学校のICT導入後の問題点のまとめ
学校のICT導入|GIGAスクール構想とは?
学校に勤めていなければ,あるは学校に勤めていてもICT教育に関心がなければ,「GIGAスクール構想」という言葉を聞いたことがないかもしれません。
GIGAスクール構想とは、「Society5.0時代を生きる子供たちに相応しい、誰一人取り残すことのない公正に個別最適化され、創造性を育む学びを実現するため、『1人1台端末』と学校における高速通信ネットワークを整備する。」国の政策のこと。
ICT教育ニュース GIGAスクール構想とは(3) ICTを活用した「学びの中身」はどうするのか
学校のICT導入の問題点|iPadやwifiなどの設備にだけ目が行っていない?
引用した通り,本来の目的は「誰一人取り残すことのない」教育です。
ただ,文部科学省のリーフレットを見ても,機材の導入にばかり目が行っていて,本当に「誰一人取り残すことのない」教育ができるのか疑問があります。
次の項目から実際に教育現場でICT機器を使った経験で,生徒が使用する機材に起こりうるリスクを考えてみます。
学校のICT導入後の問題点|何を一人一台持たせる?PC?iPad?Chromebook?Surface?
そもそも,何の端末を導入するか考えなければいけません。
営業さんは自社製品のメリットを語ってくるでしょう。
PCの扱いに慣れている人は,iPadなどのタブレット端末ではできることが制限されてしまい窮屈に感じるでしょう。
PCは自由度が高い分,細かい設定を知らぬ間にいじってしまったり,ウイルスに感染させてしまう場合があります。
大人に比べて,不注意や,悪ふざけも多くなると思います。
iPadを導入している学校が多いと思います。理由はこんなところでしょうか。
- PCは自由度が高いので,ある意味好き放題できてしまうから避ける
- Androidはいろいろなメーカーが作っていて,スペックの比較が大変
- iPadは自由度は少ないですが,使い方がシンプル
いろいろな生徒がいることを想定して扱える範囲の端末は何かということを考えなければいけません。
世界的な半導体不足が影響しています
2022年1月現在,世界的に半導体が不足しています。
在宅ワークで需要が増えつつも,工場はステイホームで閉鎖となっているからです。
この影響は学校にも来ていて,新入生が端末を確保できない,修理が遅れてしまうといったことも起きています。
学校のICT導入後の問題点|機材が故障・破損・紛失・盗難について
よくある故障・破損
画面割れは一番多いです。
机にスタンドを使って立てた状態でクラスメートが机にぶつかり落してしまった。
椅子に置いたことを忘れて,そのまま座ってしまった。
歩きながら使って落としてしまったなどです。
生徒によっては割れたまま使い続けてしまいます。
それによって中の基盤が見えるほど破損が進んでしまいます。
たまにあるのが,中のSIMカードの接触不良です。
これは故障ではありません。
SIMカードを付け直せば済むのですが,たまにしか起こらないので,問題解決になかなかたどり着かなかったりします。
ソフトが原因不明で動かないこともあります。
迷ったら再起動で解決できることが多いです。
タブレットやPCを使い慣れていないと,再起動が思いつかずこれもまた問題解決までいろんな人に聞きまわるということがあります。
機材の紛失・盗難について
タブレット端末の紛失もリスクになります。
特に移動教室や修学旅行など,いつもと違う環境で使うときは注意です!
外出先では落としたり,忘れたりしやすいものです。
故障・破損のときの保証について
保証は故障・破損時に保証があるか端末の調達方法によって変わるでしょう。
個人が買うように学校で一括購入していると一般のメーカー保証のみとなると思われます。
この形式はお勧めしません。
一番起こっている画面割れの対応をしてくれません。
同じ購入の場合でも,在学中は画面割れ等まで保証が付く契約形態を提供している会社もあります。
ただ,回数が頻繁であったり,水没は対象外となるでしょう。
リース契約にすると保証はつけられるでしょう。
ただ,卒業時に返却に返却作業が大変かもしれません。
高校3年年生の3学期は登校する日が少ないです。
数少ない登校日で持ってくるのを忘れたとなると回収が厄介になります。
紛失・盗難時の保証について
紛失・盗難は物が手元にないので,保証対象外になりやすいです。
さらには業者とリース契約をしている場合などは違約金の支払いが発生するかもしれません。
保証対象外のときの家庭との連携
保証対象外のときは,ご家庭が実費を負担するのが妥当な対応になるでしょう。
ただ,家庭によっては不満をもったり,負担を渋ったりするかもしれません。
ご家庭との契約書みたいなものを交わしておく必要がありそうです。
学校のICT導入後の問題点|パスワード忘れへも問い合わせが多い
最近はスマホを持っている生徒が多いですが,顔認証や指紋認証でロックを解除することが多く,ID・パスワードをすべて管理できている人が少ないです。
学校から持たされた機材もそういった生体認証はついていると思いますが,OSやアプリのアップデートに伴い,登録していた生体認証が解除されてしまうことがあります。
そうなると,「端末を使えない」「アプリを開けない」と言われることもあります。
サービスによっては生徒だけでなく,保護者もパスワードを忘れます。
保護者も学校の教員が対応しています。
特に慣れていない人は端末のパスワードを忘れたのか,特定のアプリやウェブサイトのパスワードを忘れたのか,事情を確認するのに時間がかかります。
学校のICT導入後の問題点|フィルタリングの対応
個人が持つスマホも子供が持つときはフィルタリングをすることになっています。
(Cf.総務省)まさか,学校が持たせている端末にかけないわけがありません。
また,アプリもゲーム等をインストールしてしまっては,学校がICT機器を持たせる道理が通らなくなります。
教員はフィルタリングを実際にかけることはできません。
通信会社や端末をリースする会社などに対応してもらいます。契約時に忘れずに確認しましょう。
フィルタリングの方式
ちなみにフィルタリングも,ブラックリスト形式とホワイトリスト形式があるといえます。
前者がアクセスできないサイトを指定する方法です。
後者がアクセスできるサイトを指定する方法です。
前者を導入すれば多少自由度は上がりますが,リストに入っていない悪意のあるサイトにはアクセスできてしまいます。
後者はアクセス可能なサイトを指定します。
安全性は高くなりますが,調べ物をする際に情報が限られてしまいます。
学校のICT導入後の問題点|悪意を持って設定を変えたり,アプリを削除した場合の対応
生徒が勝手に初期化してしまうことがあります。
そうすると,管理者権限を持っている人がアクセスできるようインストールしてあった管理用アプリまで削除されてしまうことがあります。
そうなると元に戻すのがより難しくなります。
すでに「gigaスクール構想端末の制限解除法」という言葉で一定数検索されています。
大人の場合は,会社の端末を私物化したときに減給などの罰則を割と躊躇なくできます。
それがなければ大人も貸与端末にゲームを入れてしまうでしょう。
学校では単に停学にしても解決できないかもしれません。
自分で下調べをして設定を変えているので,仮に停学になっても堂々と休めると自分のスマホでゲームをするかもしれませんね。
今の学校全般の生活指導に共通しますが,この辺りの「アメとムチ」の使い分けが難しいところです。
また,端末の制限解除だけでなく,そもそもAppleなどのメーカーすら認めていない「脱獄」をしてしまう生徒もいます。
ここまで行くとリースやカスタマーサービスの対応から外れてしまうでしょう。
学校のICT導入後の問題点への包括サポート体制は重宝されるでしょう
様々なトラブルが想定されますが,包括的なサポートは重宝されるでしょう。
- 利用規約の作成と同意書の回収
- 利用料の集金
- 端末の貸し出し管理(管理番号の付与やどの生徒にどの端末を渡しているかの管理)
- 生徒に渡す前の端末の設定(端末の制限設定,指定した学習用アプリの一括インストールなど)
- 故障・破損の際の窓口(学校を通さずに生徒・保護者が直接問い合わせできる)
- 生徒・保護者・教員のパスワード忘れや操作方法のサポート(他社のサービスのID・パスワード管理も含む)
- 端末配布時や教員との打ち合わせの時の来校しての対応
ICTはいろいろな会社のサービスを利用することになります。
問い合わせに個々に対応をするのが煩雑なので,そのあたりを解消できるサービスは現場に魅力的に見えるでしょう。
学校のICT導入後の問題点|生徒の端末だけではない!学校の施設も整備が必要です!
wifiがつながりづらいときは現場検証が必要
学校でwifiを設置すれば,端末ごとの通信量は下げられます。
フィルタリングもかけられます。
ただ,何百台もの端末をつなげられるwifi環境を作るのは難しいものです。
ホテルや商業施設では,wifiが使えるところがありますが,場所によってつながりづらいことがありますよね。
当然,学校でも同じことは起こりえます。
こういった問題を解消するためには,業者の方と学校のスタッフが現場検証をすることになります。
生徒の導線,1クラスの人数,教室の間隔などを踏まえて電波が干渉しないように設定していくので,学校に勤めている人の情報が必要不可欠です。
電子黒板,プロジェクターは消耗品です
多くの人があまり清潔でない環境で使うので,壊れやすい部分もあります。
- チョークを使う場所の近くで使用するので頻繁に壊れる
- HDMIケーブルの差込口の接触が悪くなった
- 授業中に急に電子ペンが反応しなくなった
メンテナンス用の予算を確保していないと,壊れている教室では使えないということが起きてしまいます。
学校のICT導入後の問題点のまとめ
他にもいろいろあるかもしれませんが,ざっと書いてみました。
今までの紙と筆記用具の代わりにICT機器を教育現場で使用するので,機器が手元にない生徒は今までの教育でいう,紙と筆記用具がないようなものです。
導入するならば,常に利用できる状態にするためにどう運用するかを考えなければいけません。
そうでなければ,使えない状態の生徒は学習に取り残されてしまうことになってしまうでしょう。
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