よく私立は面倒見がいい,指導が手厚いという考えをお持ちの人は多いと思います。
ただ,システム的には公立高校の方が質の高い教育ができるはずだなと思ったりします。
自己紹介
私立は生徒・保護者が学費を払っているから面倒見がいい?
私立は国・都道府県等からの助成金はありますが,生徒・保護者は自分で学費を出しているという心象が強いと思います。
(実際のところは,学費収入は全体でかかる費用の半分前後になるのかもしれません)
お金を払っているんだからいいサービスを受けられて当然と思う人もいるでしょう。
このことは私立の教員も大なり小なり自覚はあり,良い教育サービスを提供しないと選ばれなくなってしまうという感覚はあります。
ただ,一つの学校を運営するという点において,公立もお金がかからないわけではありません。
校舎が古くなれば修繕が必要ですし,教材・備品も買わなければいけません。
もちろん,教職員には給与を支払わなければいけません。
お金の出どころが全額公のお財布か,公と個人と折半するかなだけの違いなのです。
私立高校のメリット
校風が合えば充実した学校生活を送れる
私立は公立より独自性を打ち出すことができるでしょう。
部活動は長いと19時、20時まで活動する私立学校もあります。
学校行事の種類や回数が多い私立学校もあります。
校風に合っていれば充実した高校生活を送れそうです。
私立高校のデメリット
教育スタッフが少ない、非常勤講師が多い
私立高校は経営を考えながら運営します。
人件費は支出の大きな割合を占めていて,できるだけ無期限雇用の専任教員(正社員)の人数は最低限にします。
授業だけを担当する非常勤講師,専任教員から一部の業務を差し引いた常勤講師を増やした方が経営的には助かります。
非常勤講師も常勤講師も1年単位の契約が基本です。
教育に深く携われないスタッフが増えると、「手厚さ」を欠いてしまうかもしれません。
公立高校のメリット
公立高校の教員はほとんどが専任教員、支援員も多い
一方,公立高校はどうでしょうか。公立高校はほとんどが専任教員です。
産休,休職等で人が足りないときに非常勤講師の募集があることもありますが,私立高校に比べて数は少ないです。
やはり運営費として税金を使えるというのは大きな強みです。
公立の先生に聞いたことがありますが,「税金の無駄遣いはダメですが,必要なところには申請すれば予算を確保されやすい」とのことです。
教員とは別に、ICT支援員、部活動指導員、介助職員など、スタッフも充実しています。
従って,専任教員数の数で言えば公立高校の方が人的サポートを受けられそうです。
公立高校のデメリット
物事の決定に時間がかかる
私立学校は校内に理事会が設置されていれば、意思決定がスムーズかもしれません。
公立は校外の教育委員会等に承認をもらうことも多いので、内容によっては時間がかかるかもしれません。
公に受け入れ難い校風はなさそう
少し攻めた教育は公立では難しそうです。
私立は独特の校風をかかげることもありますが、公立は私立ほど攻めていない印象です。
しかし、昔に比べて戦略的になった?
一方で、都立高校はこんなものも打ち出しています。
東京都教育委員会HPより
国や一般的に関心の高い教育には取り組んでいるようですね。
また、都立はブラック校則を廃止しましたね。
なぜ,私立の方が手厚いイメージになっているのか
みんながそう思っているから
これは大きいと思います。
受験生・保護者も,私立の教員も,公立の教員も,私立の方が手厚いと思っています。
私立はその期待に応えなければ生き残れません。
また私立は基本的に転勤がないので,経営が傾けば自分の生活が成り立たなくなります。
そういった危機感もあるでしょう。
(もちろん,私立でも学校におんぶに抱っこの教員もいますが)
教育における使命感,学校の存続などにより,緊張感を持っている人が少しだけ多いのかもしれません。
(もちろん公立高校の先生も教育における使命感をお持ちの方,沢山いらっしゃります!)
私立高校から公立高校に転職した人の話を聞いたことがあります。
「断然楽になった」とのことです。
専任教員の人数が多いので,1〜2クラスに副担任が1人いると担任もお休みをとりやすいです。
(私立の副担任は1学年に1〜数名で,5〜10クラスに1人の計算になるでしょうか)
校務分掌の負担も分散でき,担任は校務分掌を実質担当しないこともあるようです。
(ちなみに,公立の中でも小学校,中学校は高校に比べて大変だと思います。)
公立の先生は行政とのやりとりが煩雑という面もあるから
一方で公立の高校の先生も大変な部分はあります。
教科書を買う場合も,業者との癒着がないことを説明するために採択理由をきちんと提出しなければいけません。
(私立は癒着していいということではありませんが,公立の方がチェックが厳しいです。)
外部研修に参加する際の参加費,交通費も申請が大変で,自費で参加する人も多いようです。
もちろん教育委員会等が実施している研修もありますが,外部の研修に参加しづらいのはノウハウを得る機会が減ってしまうかもしれません。
生徒に向き合うこと以外に色々なハードルがあって,時間が削られたり,諦めてしまうことがあるかもしれません。
転勤が多いから
公立高校は4年くらい1回転勤があると聞きます。
頻度は役職によっても変わるようです。
転勤が多いと,その学校に通っている生徒はどんな人が多いのか,そういった特徴がわかったらまた別の学校へということになってしまいます。
教育のノウハウの蓄積が難しいというのがあります。
また,モチベーションも「自分の学校」という気持ちを持ちづらく,全力で向き合うことが難しくなるという話を聞いたことがあります。
まとめ
高校では公立の方が専任教員の数が多く,実は私立よりも質の高い教育を実践できる可能性は十分にあるということを書いてみました。
もちろん,実際に公立高校でも受験に向けて積極的に夏期講習をしたりするなど,精力的な学校もあります。
教員が無理なく教育にきちんと向き合える社会になるといいですね。
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