これが実際の環境!学校のおかしい労働の解釈|働き方改革なんて遠い未来

白衣の男性が忙しい 学校の先生の仕事
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学校はブラックな職場。

よくメディアでも取り上げられるようになりました。

とは言え,どんなものかまだまだわからない方も多いと思います。

今回はできるだけ現場の声をお届けします。

隣の芝
隣の芝

自己紹介

  • 非常勤+専任の私立教員歴は約15年!
  • 担任は10年以上経験! 修学旅行の準備・引率、大学受験の指導経験もあり
  • 教科は英語海外への引率経験もあり
  • 校務分掌教務、進路、広報、生活指導、生徒会を経験!
この記事をおススメしたい方
  • 先生っていう職業に興味はあるけど,実際どれくらい忙しいの?と思っている学生さん
  • 我が子の先生は対応がそっけない感じがするけど,そんなに時間がないの?と思っている保護者
  • 自分は学校は卒業したけど,裏側のことはよく分からないと思っている方
  • 私立学校も残業代が出ないって聞いたけどホント?って思っている方

会社勤めとは全然違う?!学校で働くとこんな感じ

中学校や高校にフルタイムで勤めると,教科担当,担任,校務分掌,部活動顧問の4つの仕事を担います。

労働基準法によると,週の労働時間は40時間です。

36協定など細かい話はすっ飛ばします。

土曜日も学校がある学校と仮定して,

  • 月〜金は7時間勤務
  • 土は5時間勤務

としましょう。

教員の朝の打ち合わせに10分

担任を持っていれば,朝のHRに15分帰りのHRに5分清掃指導に15分くらい割かれます。

授業や会議平日に4時間土曜日は3時間くらい担当します。

職員室から教室までの移動時間を考慮すると,これだけで4〜5時間使います。

よって,時間的拘束のある業務平日に5時間,土曜日に4時間あることになります。

黒板と先生
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残った時間で何をするか 〜とある1日の雑務〜

1〜2時間も残るから,かなり余裕じゃん?!と思うかもしれません。

しかし,空き時間には「雑務」が残っています。

とある1日に私が処理した仕事を書いていきます。

  • PCの立ち上げ,朝の連絡事項の確認(10分)→そもそも勤務時間前の仕事
  • 出席簿と職員室にある黒板に出席状況を記入し,学級日誌にコメントを書く(5分)
  • 学校に大学,専門学校,塾などから届いたガイドブック,チラシの整理をし,掲示物を貼る(15分)
  • 学校に大学,専門学校などから届いた重要書類(公文書)をPDFにするためスキャンし,通し番号で一覧表にまとめる(60分)
  • 授業中に回収した生徒の提出物の添削をする(20分)
  • 担任をしている生徒(40人くらい)の学校行事の感想文に目を通す(20分)
  • 校内外の関係者とのメール処理(10分)

日によって仕事の内容は変わりますが,こういったことを毎日こなします。

この日は,140分ほど「雑務」に割かれました。

割と順調に仕事が進んだ日だったと思います。

ちなみに私は,仕事は早く終わらせて自分の時間を持ちたいので,あまり周囲と喋らずに黙々と仕事をします。

それでも,これくらいかかってしまいました。

PCで仕事をする人

後はお手洗いにだって行きますし,少し話しかけられて「○○を教えてくれませんか」「ちょっと物を運ぶのを手伝ってくれませんか」といったこともあります。

作業は一度始めると途中で止めづらい部分があります。

授業まであと10分あるけど,10分で終わる仕事がないな~」など,空き時間をフルに使えなかったりもします。

その分,放課後に作業を行うことになります。

どんなに時間を節約しても,1時間くらいはオーバーしてしまいます。

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雑務にそんなに時間がかかるか?

大学,専門学校,予備校などからの書類は毎日何かしら届きます。

1日に届く量は積み上げれば10〜20cmくらいになります。

(日本には本当にいろんな学校があるなとつくずく感じます)

指定校推薦の要項など重要書類は,スキャナーにかける際に片面印刷か両面印刷か確認します。

普通紙なら自動原稿送り装置を使えますが,冊子になっていると毎回開いて読み取ります。

重要書類なので読み取った後に,原稿自動送りで2枚送られていないかなど確認をします。

「学校内で一部の人しか情報を知らない」ということが起きないよう,データ化し共有します。

これが1週間に15〜20校くらい処理します。

逆にこの仕事は毎日あるわけではありませんね。

仕事を持ってくる上司

感想文は各クラス1つ選んで,学校便りに載せるので「読んで選んでくださいね」と担当部署に言われます。

メール対応は相手が業者さんだと,システムの保守をしてもらいたい模試の申し込み使っている教材に関する問い合わせなど。

校内では○○のデータを送ってほしい,協力して行う作業について「ここまで進んだので次の作業の先生は進めてください」などです。

学期中にゆったりと授業準備なんてできません

ちなみに自分の場合,授業準備はできるだけ次の学期分の準備を,夏休みなど長期休みに済ませておきます。

たまたま忙しい日を例に出しているんじゃないの?!

決して忙しい日だけを紹介しているわけではありません。

日によってやることはいろいろで,他にもいろいろあります。

  • 集めた部費から業者に支払いをする
  • 部費を全員が支払ったか確認する
  • 部費の領収書を作成する
  • 次年度の副教材の見本に目を通して選ぶ
  • 長期休暇の課題を考える
  • 定期試験の作問をする
  • 定期試験の採点をする
  • 指導要録,調査書を作る
  • 無断欠席の生徒の保護者に電話をする
  • 生徒から相談事があれば,面談をする  など

先生は忙しいと漠然と言われています。

なぜ漠然としているのか?

○○で忙しいと具体的に言える人が少ないからだと私は考えています。

毎日やる仕事もあれば,年に数回しかやらない仕事もあります。

片付けるのに数十分の仕事もあれば,何時間もかかるので数日に分けて取り組む仕事もあります。

何年も教員をやっていれば,「そろそろ○○をやる時期だな」と思い出します。

ただ,感覚的に思い出すので改めて網羅的に言葉にしようとしても難しいのかもしれません。

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部活動も自主的な労働扱い

文字通りです。

これまでの話は,勤務時間内に頑張って仕事を片付けるつもりで書いてきました。

部活動は15時半なり16時なりに始まるので,活動時間の大半が勤務時間外に行われます。

管理職はこんな筋書きで話してきます。

○○先生は〜〜部の顧問です。部活動は先生が活動日を自主的に決めてください。生徒にとって良い活動量がいいですね。活動するからには自己や怪我に備えて監督してくださいね。もちろん顧問は帰宅してはいけませんよ。

管理職の言い分

部活動手当は放課後にどれだけ活動しても,月あたりの手当は数千円程度です。

教員側(労働者側)の問題

さて,先ほどまでは実情を書いていきました。

それでは,なぜこんなに忙しくなるのか?

教員側にある原因がある点を考えていきます。

自分のこだわりによって仕事量を増やしている

会社員の方は,就職活動時にあまりなりたくなかった仕事に就くこともあります。

教員は「なりたくてなった人」が圧倒的に多いです。

ゆえに,

  • ○○をしたら,生徒のためになるんじゃないか!
  • 学級通信を書こう!
  • 1年間が終わったら一人一人,手書きでコメントを書こう!
  • 自分が顧問をしている部活を強くするために練習日を増やそう!

と,いろいろやることを増やしてしまいます。

良いことなのですが,それで忙しくなり,他の人と一緒に進める仕事に弊害が出る先生もいます。

こだわりが強く,発言力のある教員が周りの教員の仕事を増やしている!

先ほど書いた,自分のこだわりを自分でやり抜くだけなら,自分だけの問題ならまだ良いのです。

困った先生は自分のやり方を他の先生にも強要する人です。

しかも,そういった先生に○○主任など役職がついていると,「業務命令」のように聞こえます

極め付けは

〜をやったら生徒のためになると思う!!・・・じゃ,後よろしく!

のパターンです。

教科,顧問をしている部活動,担当している校務分掌,担任をしているクラスの生徒など,それぞれ負担は違います。

しかし,個々の教員が抱えていることを知らずに,「自分がやってきた正義をみんなにも!」という人は少なくないのです。

丸投げ

管理職,文部科学省側の問題

ここまでは現場レベルの話でした。

今度は管理職側に原因があることをお話しします。

「校長は命令していない」という体裁

学校運営に必要な仕事と教員が思っていても残業代は出ません。

というのも,教頭や校長は,現場の教員にこんな接し方をしています。

  • 「部活動は業務という位置づけではありません。『お願い』です。先生なら善意がありますよね?」
  • 「放課後の生徒との面談は先生方の裁量でやってください。」
  • 「生徒の学力を上げてください。でも,小テストの作成,採点は業務として指示していないので残業代の対象になりません。
  • 授業準備は先生方の自主的な労働です。
  • 「あなたは体育祭の担当教員です。でも,別に放課後に準備をしてくださいと指示はしていません。

仮に,会社で管理職側と労働者に置き換えるとこのような形になるかと思います。

  • 飲食店で営業時間外にお客さんが残りたければ2時間くらいなら残します。従業員の皆さん,残業代はありませんが対応を『お願い』します。
  • 勤務時間外ですが,お客さんからの話を従業員の裁量で聞いてください。
  • 売り上げ,業績を上げてください。人員は増やしません。営業は通常通りです。市場調査など時間外勤務でも,残業代は出しません。
  • プレゼンをしてください。プレゼンの準備,資料の作成は自主的な労働です。
  • 通常営業を続けたまま,新メニューの準備をしてください。営業時間外の準備でも残業代は出ません。

会社員に置き換えると,かなりコンプライアンス上まずいのでは?!と思っています。

(弁護士ではないので,正確なところはわかりませんが…)

でも,これが学校の日常です。

私立学校も残業代が出るところは少ない?!

公立は特給法で,公務員の給料に4%プラスにするから残業代は払わないよと法律で決まっています。

私立学校の教員は公務員ではないので,労働基準法に守られるはずなのです。

しかし,従業員(=教員)は守られていないのが現状。

業務ではなく,自主的な労働だよという位置づけにすることで全てokということがまかり通っています。

残業代なら時給換算の1.25倍を支払わなければいけませんが,それよりはるかに安い手当という形で済ませていることがあります。

同じ仕事をしても事務員は残業代が出る!

不思議なことに,同じように書類の整理,会議・打ち合わせ,行事の準備をしても,事務員は残業代がつくようです!!

ネット上にも,

事務の人と一緒に残業しているのに,事務員には残業代が出て,教員は出ない

ネット上の先生のつぶやき

といった嘆きを目撃しました。

さほど給与体系も変わらないのに,事務員は残業代出るんかい!とツッコミたくなります。

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タイムカードによる打刻はあってないようなもの

タイムカードによる打刻を取り入れている学校も多いです。

しかし,ほぼ有効性はありません。

先生方,これだけ学校で仕事をしているんですね。そんなに自主的な労働をして熱心ですね。

学校の管理職

はい,これで終わりです。

教員が多忙でも結局は他人事

おそらくこの辺りがブラックと言われる所以なのではと感じています。

それでもなぜ根本的な解決がなされないのか。

結局は他人事だからです。

この辺りはこの記事をご覧ください。

無理が続けば,持続可能な成長はできません。

今回の記事が学校の裏側を知るきっかけになって,日本の教育が安定的に良くなっていけばと願っています。

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