時制の一致。
主節の動詞が過去形になると,自動的に従属節の動詞も過去形にする,と最初は習います。
簡単な文法問題を解くだけならいいのですが,実際に英語を書いたり,入試問題を解いたりするレベルになると,複雑になります。
ここでは日本語との比較をしながら,時制の一致について書いてみます。
自己紹介
時制の一致のおさらい
Tom thinks that Karen studies English hard.
(カレンは英語を一生懸命勉強するとトムは思っている)
この文では,トムは今「思っている」わけですが,「思っていた」とするとどうなるか。
Tom thought that Karen studied English hard.
(カレンは英語を一生懸命勉強するとトムは思った)
このようにthinksをthoughtと過去形に変えたら,従属節内のstudiesもstudiedと過去形に変えましょう。
これがいわゆる時制の一致の一般的な説明です。
時制の一致のポイント!従属節の時制 〜英語と日本語の比較〜
さて,ここで日本語との比較をしながら時制の一致についてもう少し考えてみたいと思います。
先ほどの例文では「トムは〜と思っている」「トムは〜と思った」とthinkの時制によって「思う」の部分は変わりました。
Studyの部分はどうでしたでしょうか。
英語が現在形でも過去形でも「勉強する」という日本語でした。
実際に日本語を母語としている人はあまり実感が湧かないかもしれませんが,日本語における従属節内の現在形は主節と同じ時制になるという特徴があります。
相対時制と言えます。
一方,英語は従属節内で現在形,過去形が使われていて,絶対時制であることが分かります。
相対時制:文脈が想定する時点を基準にした時が表現される。
絶対時制:「今」、すなわち発話時を基準にして過去・現在・未来などの時が表現される。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 絶対時制と相対時制
つまり,その動詞単体で現在or過去などが分かれば絶対時制,他の動詞と同時orそれより前など比較しないとはっきりしないのが相対時制です。
ちなみに,引用からには「発話時を基準に・・・」とありますが,話すだけでなく書いたときでももちろん同じです。
言語学では例文を書いた時も話したのと同じで「発話時」という言い方をします。
英語の準動詞(不定詞,動名詞,分詞),過去完了形(大過去)は相対時制になります。
相対時制についてもうちょっと詳しく
分詞構文の書き換えで考えてみます。
Walking along the seashore, I found a beautiful seashell.
(海岸沿いを歩いていると,綺麗な貝殻を見つけました)
分詞になっているwalkingだけを見てもいつのことなのか分かりません。
主節にfoundと過去形があるから,foundと同じ時で過去のことなんだとわかるわけです。
接続詞を使って書いてみます。
When I was walking along the seashore, I found a beautiful seashell.
このようにwalkとfindが同じ時の出来事で,両方とも過去形が使われています。
英語の従属節内の時制は絶対時制
一方,先ほども触れた通り英語における従属節内の時制は絶対時制です。
分詞,to不定詞などではなく,現在形,過去形が使われています。
従属節内のことが過去のことを言いたいときは過去形を使うのです。
だから,時制の一致という単純なルールで覚えるのではなく,絶対時制だからと考える方がよりルールの本質に近いのです!
時制の一致の例外も怖くない|英語の従属節の時制の特徴を理解しよう
英語の従属節内は絶対時制だということはわかりました。
では,発話時との後先関係で動詞の形を決めればいいじゃん!
(ここでも発話時は話すだけでなく,書いた時も含まれます)
これが例外に共通することです。
不変の真理
Our teacher said that the earth is round.
(先生は地球が丸いと言った)
地球が丸いことはいつだってそうですよね。
でも,昔は平らだと言われていました。
Ancient people said that the earth was flat.
(昔の人は地球は平らだと言った)
この場合は不変の真理ではないですので,wasと過去形になります。
明らかに現在も変わらないことを話す
今でも当てはまることは,現在形で書いてしまうことがあります。
My uncle said yesterday that he works for a TV station.
(私のおじはテレビ局で働いていると昨日言った)
昨日テレビ局で働いている言っていたなら,今日だってテレビ局で働いているでしょう。
ただ,この「明らかに現在も変わらない」からということで現在形が使われるケースは少ないです。
以下の3パターンに分けて理由を考えてみます。
ルール通り:従属節内の出来事が発話時までに起こっている
Tom thought Karen would visit Osaka.
(トムはカレンが大阪を訪れると思った)
この場合は「トムが~を思った」という過去の時点過去の視点から見た時の未来の出来事なので,willを過去形にします。
発話時よりは昔なので,willは使いません。
一般的な時制の一致になっています。
例外:従属節内の出来事がちょうど現在のことを言っている
Tom thought Karen is a high school student.
(トムはカレンが高校生だと思った)
トムは久しぶりに親戚のカレンに昨日会いました。
カレンが高校生であることは昨日,今日で変わりません。
だから,従属節内でも現在形のisが使われます。
図示するとこのようになります。
TV局で働いている例文と同じような意味なので,現在形でも間違えと言い切れません。
ちなみに少し例文を変えたのは,単文でKaren visits Osaka.という文はあまりないからです。
例外:従属節内の出来事がこれから行われる
Tom thought Karen will visit Osaka.
(トムはカレンが大阪を訪れると思う)
この英文は間違えと言い切れません。
時間の後先関係はこのようになります。
なぜ,実際には明らかに発話時でも当てはまるのに時制を一致させることが多いのか?
さて,本題の「明らかに現在も変わらないことを話す」ときでも,従属節が過去形になりやすい理由を考えてみます。
1つめの「従属節内の出来事が発話時までに起こっている」なら,発話時から見たら過去のことなので単純な現在形やwillを使うことはありません。
いわゆる例外になっている2つ目と3つ目の,従属節内のことが発話時と同時または発話時の後に起こるケースについて考えてみます。
そもそも従属節を使う時点で間接的に出来事を伝えようとしていることになります。
カレンが高校生であることをはっきり言いたければ,Tom thoughtなんてつけません。
話者の視点で言いたければ,Karen is a high school student.であったり,Karen will visit Osaka.と単に言えばいいのです。
(ちなみに,「話者」という言葉ですが話すだけでなく書いた人のことも含めています)
Tomの視点で物事を言いたいから,わざわざTom thoughtとつけたわけです。
わざわざ,Tom thoughtをつけるのは,発話時の視点ではなくて「Tomが思っていた時はこうだったよ」と伝えたいのです。
だったら,Tomの視点,つまりthoughtと同じ時制に合わせてあげるのが筋なのです。
また,単純現在形は話者の確信度が高いときに使う時制です。
地球が丸いかどうかなどと不変的なことは誰かが「~と思っている」「~と言った」ことに加えて,話者自身も強い確信を持てます。
不変的なことは話者が言い切ってしまえばいいのです。
誰かの旅行の予定であったり,学生かどうかなど,個人的なことに対して,話者の確信度が高い現在形を使うのは不自然です。
従属節が仮定法の時は,内容によって影響を受ける
仮定法がからむ時制の一致はやや厄介です。
仮定法は想像上のこと屋、願望を言うときに使われます。
想像上のことについて,特定の時間の概念がないこともあります。
こういった想像上のことや願望が特定の時間を意識していません。
だって,「起こらないこと」を想像で語っているわけですから。
だから,このように時制の一致は起こりません。
I wish I could fly.(飛べるといいなと思っている)
I wished I could fly.(飛べるといいなと思っていた)
とはいえ,仮定法の文でも具体的な時のことを言うときがあります。
My friend said, “if you did not said something like that to her, she would not be angry.”
My friend said if I had not said something like that to her, she would have not been angry.
(あんなことを彼女に言っていなかったら、彼女は怒っていなかったのに、と友人は言いました)
わかりやすいように直接話法,間接話法で並べました。
自分が余計なことを言ってしまったのは特定の時を意識しています。
特定の時を意識するなら、仮定法でも時制の一致が起こるのです。
主節が仮定法で従属節が直接法の時は?
今度は仮定法の動詞の目的語の一部になっている動詞はどうなるか考えてみます。
If my boss had told me what I was supposed to do today, I would have not be working till late.
(もし上司が,今日私がやるはずのことを伝えていたら,遅くまで働いていなかっただろうに)
少し厄介なので,動詞ごとに仮定法か直説法かいつの出来事かを整理してみましょう。
改めて,かなり厄介な例ですね。
ここまでくると,時制の一致というルールと例外から考える方が難しいかもしれません。
時制の一致についての解説でした
昔みたいに話法の書き換え問題に取り組んでいた時代は時制の一致というルールが便利だったかもしれません。
こっちを過去形に変えたら,あっちも過去形に変えますと自動的に考えて入ればいいからです。
今は実際に英作文ができるかが注目されているので,書き換え問題は減っています。
今回の記事で時制の一致が分かった!となってくれると嬉しいです。
参考文献
江川泰一郎(19913)『英文法解説』金子書房. 東京.
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