英語の勉強に文法はいらない?

英語のノート 高校生への英語知識・学習法
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以前,高校生の授業で,次の表現を使って論理関係(原因と結果)を書いてみるものがありました。

  • At a result of the rain, this street is wet.
  • Due to the rain, this street is wet.
  • Because it has rained, this street is wet.
  • ざっくりとどれも,「雨のためこの道は濡れている」という意味です。

英語に慣れている方は,as a result ofとdue toの後は名詞が続き,becauseの後は文の形が続くことがわかります。ただ高校生はすべて同じように文を続けていました。

例えば,*As a result of it has rained, this street is wet.などです。

ネイティブスピーカーはこんな間違えをしません

おそらく英文法をきちんと学んでこなかったので,ネイティブが絶対しない間違えが起きてしまうのかなと思っています。

最近の英語教育は英文法をがっつり教えることはよろしくないという風潮があります

実際に「英文法」という授業や教科書はありません。

ただ,必要だと思い副教材として問題集や参考書を授業で使っている学校が多いと思います。

今日はこのあたりの事情を伝えていきます。

隣の芝
隣の芝

自己紹介

  • 大学院の修士課程を経て英語の教員に
  • 専攻は英語学時制、助動詞、進行形をなど中心に勉強しました
  • 非常勤+専任の私立教員歴は約15年!

英語の文法はいらない?学習指導要領にはどう書かれている?

学校の教育活動で基になるのが学習指導要領。

高等学校学習指導要領の英文法にかかわる部分を見てみましょう。

エ 文構造及び文法事項
 小学校学習指導要領第2章第 10 節の第2の2の(1)のエ,中学校学習指導要領第2章第9節の第2の2の(1)のエ及び次に示す事項については,意味のある文脈でのコミュニケーションの中で繰り返し触れることを通して活用すること。その際,(イ)に掲げる全ての事項を,適切に取り扱うこと。
(ア)文構造のうち,活用頻度の高いもの
(イ)文法事項
a 不定詞の用法
b 関係代名詞の用法
c 関係副詞の用法
d 接続詞の用法
e 助動詞の用法
f 前置詞の用法
g 動詞の時制及び相など
h 仮定法

高等学校学習指導要領(平成30年告示) 英語コミュニケーションⅠ

中学校学習指導要領もほぼ同じです。

文法事項がより基本的なものが並んでいました。

分量が多かったので原本をご覧ください。

どちらも英文法を体系的に教えるのではなく,既習事項は文脈の中にあるものを繰り返し扱うことになっています。

新しく学ぶ文法やあまり触れられてこなかったと思われる文法事項は適切に扱うことになっています。

学習指導要領も文法は使わないのではなく,適切に扱うようにという趣旨で書かれているのです!

さすがに小学生が文法を体系的に学ぶのは難しく,コミュニケーションの中で「言語の型」に気づかせることがよいでしょう。

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英語の文法を「コミュニケーションの中で繰り返し触れること」ができるのか?

母語を獲得するときは,やれ主語,動詞,関係詞などと教えられるわけではありません。

だから英文法を体系的に扱わなくても言語を習得することができると思う人がいるかもしれません。

ただ母語と第二言語では異なる点がいくつかあります。

英語の授業は週に4時間程度

母語の獲得には1日中その言葉に触れています

それでも簡単な文を話せるようになるまで2年程度はかかります。

単語がたくさん出るようになり、そのバリエーションが増える時期です。2歳頃には「わんわん、いた」「まんま、ちょうだい」などの2語文が話せるようになります。2語文が出るようになると、そのうち「ママ、おもちゃ、とって」などの3語文も出るようになります。

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一方,英語の授業は週に4時間程度です。

これも学習指導要領で示されています。

  • 中学校の英語の授業は1年で140時間
    • 1年間35時間換算なので,週に4時間
  • 高等学校は科目により異なります
    • 英語コミュニケーションⅠ 週3時間
    • 英語コミュニケーションⅡ 週4時間
    • 英語コミュニケーションⅢ 週4時間
    • 論理・表現Ⅰ 週2時間
    • 論理・表現Ⅱ 週2時間
    • 論理・表現Ⅲ 週2時間

高校は英語コミュニケーションと論理・表現を組み合わせると6時間が標準となります。

この数字以上実施することもできますが,他の科目の勉強もあるので,1週間の半分以上英語などとはできません。

これだけ学習時間に差があると同じ学習方法で何とかなるはずがありません。

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英語の文法は体系的な学びも,体験的な学びも両方大切!

運転免許を取るときに座学と実習の両方をやりますよね。

言葉の勉強も体系的な学び,体験的な学びの両方をやっていくのが絶対よいです

特に母語の獲得のように時間をかけられないならなおさらです。

体系的な学びで正しい表現を学びつつ,その知識をどんどん使っていくことで言葉に慣れていけます。

体系的な学びだけでは実際の場面で英語を使えません(文部科学省はこのことを危惧して体験的な学びに舵を切っていますが…)。

かといって体験的な学びだけでは時間が足りなかったり,その場限りの学びに終わってしまったり(すぐに忘れてしまって実力につながらない)します。

両方をバランスよくやっていくのが大切で,文部科学省や教員は国の実情や目の前の生徒の様子を見て調整していくのがよいのではないでしょうか。

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