コロナ禍になり,最初はリモートでの教育活動も混乱がありましたが,少しずつオンライン授業が浸透してきました。
一方で,コロナ禍前に学校を卒業した人にとっては,オンラインと対面の違いのイメージがつかない人もいるかもしれません。
画面越しであること以上の違いについて書いてみたいと思います。
高校の英語のオンライン授業で工夫した点をお伝えします。
なお今回はオンデマンドではなく,ライブ授業について話していきます。
対面授業の黒板の使い方とオンライン授業の黒板の使い方
そもそも英語の授業はどう黒板を使っている?
本文の解説をする場合は,英文を白いチョークで書いて,黄色や赤いチョークで解説を書き足していきます。
例えば,赤いチョークで名詞は[ ],形容詞は( )などです。
またスクリーンがある教室では本文を投影しておき,スクリーンペンで解説を書き足していきます。
文法問題の解説も解答を書きつつ,解説を書き足していきます。
ここでお伝えしたいのは,割と黒板やスクリーンを多用するという点です。
多用するということは,黒板等を広くつかうということです。
対面授業の黒板の使い方
何気なく授業を受けているときは実感が湧かないかもしれませんが,黒板は横に長いです。通常は2分割,3分割にして順に板書をし,生徒はノートを取っていきます。
英語は書くことが多いのでこれが数回転おこなわれます。
教員が黒板に書いているときは,教員自身の体で書いた内容を隠してしまいますが,黒板を分割して使えば横に移動し新しいことを書いている間に,生徒は隠れていた部分をノートにとることができます。
カメラで黒板を映すとどうなるのか
オンラインになるとどうでしょうか。
カメラの画角(=生徒が端末で見える範囲)はそこまで広くないので,黒板を2分割,3分割にして使いづらいのです。
もちろん黒板の右側を映すカメラ,真ん中を映すカメラ,左側を映すカメラと複数台用意すれば良いです。
しかし,予算的に許してくれません。というかカメラを使っている人は私費で買っている方が多いのでは?
授業をやりながらカメラを切り替えるのは大変です。
テレビ番組で演者がスイッチャーを兼ねるようなものだと言えばイメージしやすいでしょうか?
その都度,1台のカメラで向きだけを変えれば少し楽では?と思うかもしれません。
ただ,正面から黒板が見られないので,黒板の端に行くほど字が小さくなります。
特に画面越しには文字が見えづらくなります。
また,カメラマンもいませんので,向きを変えるごとに教員が授業を中断する必要があります。
1台で黒板全体が見渡せるくらい引いた位置に置くと,文字が小さくなってしまいます。
予備校の映像授業はカメラを複数台用意して,カメラマン,スイッチャー,編集などをするスタッフがいるでしょう。
学校ではそんなスタッフを雇ってくれる予算を確保できません。
ということで,サポートしてくれるスタッフなしで,1人で授業を展開するなら黒板を分割しないのが無難と思っています。
ただ,それでも対面授業に比べて進度に遅れが生じてしまいます。
先ほど触れた,黒板を狭く使わなければいけないこともそうですし,また板書の後に生徒がノートを取る時間を待って,次の内容に移るので少し「待ち」が生じてしまうからです。
対面授業とオンライン授業を同時に行っている報道について
対面授業とオンライン授業の両方を同時に行っている様子が報道されることがあります。
私が見る限り,報道の中の授業スタイルを見ると,アクティブラーニング型になっていました。
このスタイルの授業は対面とオンラインの同時実施はやりやすいと思います。
アクティブラーニングは知識の伝達ではなく,児童生徒に主体的に考えさせることを目的としています。
伝える知識が少ないので黒板にあまり書くことはありません。
一方,受験を視野にいれた指導は,知識をインプットし,そのうえで問題演習を通して思考力を鍛え,問題形式にも慣れていきます。
授業中に教員が情報発信する量が多いです。
また単語テストなどの小テストを実施しないと「やっておけよ」指導では生徒は勉強しません。
小テストは家でやると不正が起こるので対面になりますね。
公立の小中はアクティブラーニングを取り入れることが多いので対面とオンラインを同時に行いやすいです。
一方,公立の高校,私立の中高は大学進学を意識することが多いので,黒板を広く使え,小テストを実施できる対面授業に統一したほうが学力向上につながりやすいです。
どうしても同時実施をするならば,オンラインの授業スピードに落として,オンラインの人は小テストを平常点に入れられず実施するしかないかなと思っています。
カメラ位置の調整にも時間がかかる
また,黒板が見やすい位置・角度にカメラの調整をしなければいけないわけで,授業前に少し手間がかかります。
黒板に対して斜めに設置してしまったり,近すぎたりします。
中学・高校は50分授業,10分休みという流れが多く,私の経験では10分で三脚・カメラを設置・位置の調整をし,PCを立ち上げ,zoom・デジタル教科書などのソフトを起動し,プロジェクターの電源をつけ,HDMIを繋げて・・・などと準備するのは厳しいです。
(もっと手際よくやればできるのかもしれませんが・・・。)
しかも授業が連続している場合,前の授業の片付けと教室移動もあるので間に合いません。
日本の学校は教科担当者が生徒の部屋に行って授業をするので,カメラを置きっぱなしにすることができません。
次の先生がその教室で授業をするので,毎回片付けなければいけません。
学校全体の整備で,映像授業を取れるように固定カメラを設置しているところは全日制ではあまりないと思います(通信制ならありうるか?)。
ちなみに私は明らかに間に合わないことがわかっているので,「授業の始まりに戸惑っていたら,すでに配布している問題を解きながら時間を使ってください」などと事前に指示しています。
また,事前に問題を配布できなかった場合は単語を覚える時間にしてもらったり,何かしらやることを提示するようにしています。
今のところ行き着いた広角カメラ
先ほども少し触れましたが,撮影のことを知っていて積極的な教員はカメラを私費で買っています。
ただ,PCやタブレットについているインカメラを使っているひとが多い気がします。
個人的に,PCのインカメラは位置や高さの調整ができないので,黒板を使った説明のときは使いません。
自分は撮影などに興味があるということもあって,下で紹介している三脚に取り付けられる広角のウェブカメラを買いました。
画角は120度くらいのものです。
三脚に取り付けられれば,位置や角度の調整がしやすいです。
広角のカメラは教卓から手の届くところにカメラを置いても黒板を幅広く映してくれるので,教卓に置いた手元のPCで映り具合を見ながら角度や位置を調整できます。
ただ,広角カメラは上部と下部が歪んでしまうのが難点です。
英文を解説する際の文字が読めなくなるほどでもないので,容赦してもらっています。
配布物は事前に配っておく
オンライン授業は紙媒体の配布ができません。
割とデジタル機器が好きな私ですが,メモを取ったり問題を解いたりするには紙がやりやすいなと感じています。
特に英語は本文や新出単語を印刷したプリントを配っている先生も多いのではないでしょうか。
生徒も感じ方はそれぞれだと思います。
したがって,できるだけ学校で印刷してあげて登校日などに事前に渡すようにしています。
プリンターのない家庭もあるでしょうし,プリンターがあってもあまり沢山の枚数を印刷させるわけにはいきません。
もし,登校日などに事前に渡すのが難しい場合は,資料は画面上で表示させ,ノート書き取れるよう授業展開を考えます。
生徒が見ている画面をイメージして授業をする
Zoomなどでライブ授業中に,生徒が持っている端末(iPadなど)にプリントを画面共有させたまま黒板を使いません。
通常の授業では机の上にノートやプリントを置き,黒板等を見ながら受講します。同じように,生徒に資料を配布している感覚で,資料を画面共有で表示させたまま,黒板を使って授業を展開してしまいがちです。
(かつてやったことがありましたが,生徒から指摘が入りました・・・。)
ライブ授業では端末の画面に黒板等を映して授業を展開していきます。
端末に資料を表示してしまうと,カメラを黒板に向けていても生徒に映像は届きません。
すでに配布したプリントなどで何を手元に置いて欲しいか示すためには画面共有を使いますが,使う資料が伝わった後は画面共有を解除します。
資料は画面上に表示したもので授業展開するよりは,事前に生徒に配布しておくか,初めからノートを使って授業すると割り切ったほうがよいでしょう。
Zoomで音声を配信するためにPCに音声データをインポートしておく
授業中に音声教材等を利用する人は,普段,CDを使い,CDデッキから教室に音を流す人もいるでしょう。
自分はドライブなどにあげておき,タブレットからBluetoothスピーカーで流します。
PCを使うより,起動が速く,スムーズな授業展開ができます。
一方,例えばZoomの「音声を共有」を使う場合,配信するための音声データがZoomがインストールされているPCになければいけません。
教室に流れた音をもう一度マイクで拾うと聞き取りづらくなるでしょう。
普段と違うデバイスにデータを入れ直す作業が必要になるということです。
Zoomを使っているとPCがフリーズしてしまうことがある
これは予期することが難しく,自分もたまにやってしまいます。
zoom授業をするときは,zoom,音声再生ソフト,ワード,などを起動します。
ワードは黒板に書くより打ち込んだほうが速く文字を伝えることができるからです。
以前,カメラをオンにして私を映しつつ,PCの音声を共有にしたらフリーズしてしまいました。
画像処理と音声再生がPCにとって重すぎたのでしょう。
次からは,音声再生ソフトをそのまま音声と共に画面共有やり方に変えました。
評価に加味する小テストは実施できない。
先ほども触れましたが,英語を教えていると避けられないのが語彙の暗記です。
対面授業では単語テストなどを実施しますが,オンラインではできません。
簡単にカンニングできてしまいます。
小テストができないのは学力向上の大きな足枷になると感じています。
もちろん元々テストがあろうとなかろうと勉強しない人もいれば,逆に勉強する人もいます。
ただ,緊張感を与えられるから勉強に向き合う中間層の生徒にとっては暗記から遠のいてしまうきっかけになるでしょう。
まとめ
もしかしたら,オンライン授業なんて普段の授業をカメラで簡単に撮っているだけと思っていた人もいるかもしれません。
こういった違いがあることに気づいてもらえればと思います。
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