ネットで検索をすると,担任の先生と合わない,担任が嫌いという声を見かけたりします。
ほとんどの先生が真面目に仕事をしているのに,なぜ担任は嫌われることが多いのでしょうか。

自己紹介
担任が嫌いな理由:それは自分の思い通りに動いてくれないから
昔に比べて親が優しい?!
少し前に「友達親子」という言葉が流行りました。
今の子供は昭和生まれの人に比べて,親が自分の言うことを聞いてくれる時代になっています。
私自身は昭和の人間なので,食べたいもの,遊びたいことなど,10回お願いをして叶うのは2,3回くらいだったと記憶しています。
幼稚園や学校はモンスターペアレントの対応に苦慮している
学校側も幼稚園,小学校くらいまではモンスターペアレントの対応に苦慮することもあり,当たり障りのない指導で終えてしまうことが増えたのではとは感じます。
とある小学校では親の対応に苦慮したため,学芸会では強引に主人公を複数人にしたという話もあるくらいです。
中学生くらいから現実は意外と厳しいと実感する
親も子供が大きくなると我が子第一主義の主張をしなくなる印象があります。
さすがに、中学校以上で主人公を複数人にする劇の話を聞いたことがありません。
おそらく,担任と合わないと感じるのは中学生以上ではないでしょうか?
わりとお願いを聞いてくれる家庭に育って,中学生くらいから「時間を守らないと大人になってから困る」「成績を取らないと進路に影響する」と生活指導面,勉強面,進路面で厳しい言葉を突きつけられます。
自分にとって不都合のある価値観を押し付けられるわけですから,ネガティブな感情を持つのも納得ができます。
高校の現場で,「今の高校生は幼いね」と大学の先生と言われたことがあります。
小学校で体感する厳しさが中学校で,中学校の厳しさが高校で,と言った具合に厳しさを先延ばしにされているという印象があります。
ここまでの話はあくまで一つの視点にすぎない
もちろん当の本人達はもっと厳しい時代があったことすら知らないので,自分達が緩い環境にいるという認識は全くありません。
だからこそ,中学,高校になって「担任は口うるさくて嫌い」とか「価値観が合わない」という気持ちになるのです。
補足すると,全ての家庭,全ての学校が緩くなったというわけではありません。
ただ,じわじわと増えてきています。
ここまで教員が「生徒を育てたい!」という善意を持っている前提で話を進めています。
しかし,そうではない場合もあると聞いたことがあります。
社会通念の範疇を超えて,単に自分の思い通りに生徒を動かしたいとしか周りから判断されない行動をしている人もいるのは事実です。
学校であろうと,会社であろうと,そういった大人は少なからずいます。
冤罪になっても今度はその人の人権を侵害したことになるので,どうやってそれを見抜くかが難しいところです。
そんな今の時代に担任に求められる能力
そう言ったわけで担任は目の前の生徒のそれまでの育てられ方と,社会で求められるであろう厳しさの間で毎日生徒指導をしていきます。
中高の教員からすると入学してくる生徒に対峙した時に,昔に比べてその差が大きいゆえ指導に苦慮していると考えられます。
また,

いやいや,教員は社会人経験がないじゃん!
と言われるかもしれませんが,営業成績やインセンティブがといった話の前に,ひとまず時間を守る,人に迷惑をかけない,いろんな人とかかわるうえで大人として最低限のことに絞って話をします。
そんな時代だからこそ,教育職,特に担任業務でどんな力が必要なのかあげてみました。
もちろん指導上のノウハウだけでなく,実務能力も必要です。
両方に触れていきます。
個の生徒とのコミュニケーションの場面
毎朝のHRのように集団指導をする場面もあれば,個々の生徒の対応をする場面もあります。
まずは個別対応の際に求められる能力です。
観察力
面談等で話をする前に少しでも生徒の日頃の様子は頭に入れておいた方が良いでしょう。
注意が散漫になりがち,クラスメートと人間関係を気づくのが苦手,勉強に全く手がついていないなど,です。
そう言ったことを知るためにも,ホームルームではできるだけ顔を上げて生徒の様子を観察しながら話ができるといいですね。
新人のころは緊張もあり視線が下がりがちですが,できるだけ上げるようにしましょう。

聴く力・コミュニケーション能力
生徒が困っていたり,問題を抱えていたら,話を引き出してあげるのがいいでしょう。
中には怖い先生のキャラクター,柔らかい先生のキャラクターなど,指導上,役割を演じたりすると思います。
教育はチームで行うものなので,柔らかい先生が情報を聞き出すのもいいかもしれません。
家庭教育でも父親が一喝したら,母親が(父親の言ったことを否定せずに)なだめる。
母親が一喝したら父親が逆のことをする。
家庭教育もチームワークが大切です。
忍耐力
すぐに答えを出さないことです。
大人になれば何をするにしても,まず自分で考えなければいけません。
子供のときに待っていれば答えをくれるという癖がついてしますと,自分で考えることをしなくなります。
また,唯一の答えではなく複数の許容できる答えも受け入れてあげるのがよいでしょう。
テストの採点の場合は,点数の公平性から複数解答の許容は難しいかもしれませんが,担任として生徒と関わる中で白黒はっきりできることはむしろ少ないかもしれません。
集団指導をするために求められる能力
声量・統率力
正直,声が小さい人は教員に向きません。
生徒がいつまでも喋っている,説教をしなければいけない,遠足・修学旅行など校外で遠くにいる人を呼ばなければいけない,教員は大きな声を出さなければいけないシーンがあります。
毅然とした対応
毅然とした対応は個の指導にも関係すると思いますが,いいもの,ダメなもの,そしてグレーゾーンをきちんと考えて,いいもの,ダメなものは明確に示していくことに尽きます。
その過程で生徒は反発をしてきたりするかもしれませんが,特にダメなものをダメだと全く言われないまま大人になるのは不憫なものです。
学校はグレーゾーンを嫌う先生が一定数いますが,もろもろ含みおいて,グレーにしておくのか,それでも白黒はっきりすべきなのかを説明すると多少は伝わりやすくなるのではないでしょうか。
関係調整力
クラス運営のことを考慮すると,一人一人の生徒に向き合うだけではダメです。
大人になっても人間関係のトラブルはあるので,生徒同士,大人の人間関係を学ばせるようグループワーク等を促します。
ただ,健康を害してしまう,学校に来られなくなってしまうなど,修復不可能な場合もあります。
そう言った場合は教室内の席を離したり,年度途中でも係や委員会の担当者を変えたり,臨機応変な対応が必要です。
実務的能力
話し方だけではもちろん担任は務まりません。
中身が必要です。
事務能力
生徒に配布する書類,回収する書類,未提出者の管理,推薦書等個別に頼まれた書類の作成,三者面談のシフト作成,修学旅行や遠足の班決めなど,あらゆる事務作業をしなければいけません。
下の記事でもどんな仕事があるか紹介しています。
語彙力
語彙力のある先生の話を聞くと素晴らしいなと思います。
できるだけ短い言葉で的確に説明できる方が聞いている方にとってはよいからです。
伝えた言葉の補足を繰り返したり,ニュアンスが違うからと言い直して話が長くなるのは本当はよくないなと思います。
進学・キャリアの知識
中学,高校は卒業後に控えている進学や就職のお世話をすることがあります。
模試等を使って積極的に志望校を提案するケースもあれば,生徒が希望を言うのをじっと待つ消極的なケースもあります。
どちらにしても,希望する進路によって調査書や推薦書を書いたりします。
調査書や推薦書は提出先によって書式や内容の指定があることもあり,生徒が希望してきた場合はどんな書類が必要なのか調べ直すこともあります。
生徒,保護者は自分の学校,就職先しか調べませんが,担任はクラス全員分なので十数種類から数十種類のパターンを調べます。
数的分析能力
ひとつ前で触れた模試の分析や,校内偏差値の計算など,文系の教員でも数的分析能力は必要です。
また数的分析ではありませんが,業務で使う程度にExcelが使えない人は「ちょっと困った人だなー」と思われてしまいます。
素早い判断力
生徒はこちらが想定していないようなことを悪気なく質問や宣言してくることがあります。
例えば・・・
- (文系クラスに所属している生徒が)やっぱり大学では理系の学部に進もうと思います。
- 遠足に○○は持っていっていいですか。
- 定期テストの日に無断欠席 など
1ヶ月のうち少なくとも数回は,多い時では週に数回は不測の事態が起きます。
経験を積めば不測のことは減りますが,50代の先生でも「なかなか全てを想定はできないよね〜」と言っていました。
こういった時はまず「考える時間をちょうだい」が言える状況なのか,すぐに答えを出さなければいけないのかの選択をせまられます。
大人の世界で一般的には「確認後に回答します」だとは思いますが,あまり問題を先送りにすると手遅れになったり,量が増えると仕事がダボつきます。
一方,拙速な判断は後々トラブルになったりします。
この判断に頭を使うなと思いました。
今の時代に必要な担任のスキルのまとめ
ということで,担任と合わない理由,担任が嫌われる理由と,担任が置かれている状況について書いてみました。
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